My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3

「ラグ、この子!」
「あぁ。賊の一人だろ」

 平然と言うラグ。彼は最初からわかっていたようだ。

「で、でも、こんな子が!?」

 てっきりあの偽ラグの一味のような荒っぽい、いかにも野党な連中を想像していた私は思わずそう口に出してしまっていた。
 すると彼女は楽器を口から離しきっと私を睨み見た。

「こんなって何だ! バカにしてんのか!?」

 憤慨したように怒鳴った彼女に私は慌てる。

「ち、違うの! バカになんて」
「それにな、アタシらは賊なんかじゃない!」

 続けてそう言い放った彼女に私はえっと声を上げる。――どういうことだろう。
 戸惑いながらラグを見ると、彼は彼女に冷たく言った。

「菓子泥棒だろ?」
「……っ!」

 途端、彼女はぐっと押し黙り悔しげに唇を噛んだ。しかし今度は否定しない。

(賊じゃないけど、お菓子を盗んだことは事実ってこと?)

 顔を真っ赤にしてラグを睨み見ている彼女は、やはり悪い子には見えなかった。
 私はきっとまたどこからか現れるだろうモンスターにビクビクしながらも言う。

「あのね、私たち本当に貴方達をどうにかしようと思って来たわけじゃないの。私たち金髪の男の人を捜してて」
「金髪?」

 私のその言葉に彼女が反応した。その表情が怒りから驚きに変わったのを見ながら私は続ける。

「貴方達のところに金髪の男の人がいるって聞いて、だから確かめに来ただけなの!」
「もしかしてお前ら――」

 そう彼女が何か言いかけた時だ。彼女の後ろから突如大きな影が飛び出した。
 彼女を護るように前に立ちはだかったそれは、あの時のモンスターに間違いなかった。
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