クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
「悪かったと思ってる。汐里には何度か打ち明けようと思ったものの諸々(もろもろ)片付いてからの方がいいと考えてた」

「片付くってなに? 私との関係を含めて?」

 話せば話すほど心が冷たくなっていく。こんな嫌味っぽい言い方をして、自分がすごく嫌な人間に思えた。でも止められない。

「っ、汐里と付き合っていても、家の事情で彼女に会う羽目になっていた。余計な心配はかけたくなかったんだ」

「私、そんなに信用なかった?」

「違う、そういう話じゃない」

 いつもとは異なり亮の方が歯切れが悪い。昼間とは違い、私は彼の目をまっすぐ見つめた。

「亮の態度は桑名さんに対しても失礼だよ」

「失礼じゃない。相手だってわかっている話だ。親同士が言っているだけだって」

「そうかな? 彼女は亮を本気で好きだと思うよ」

 亮は知らないんだ。家のためだけに結婚しようとする女性が、わざわざ付き合っている相手に会いにくる?

 亮は父親がって言っていたけれど、彼女は自分の意志で亮と結婚したいと思っている。

 私はさらに畳みかけた。

「結婚するつもりはないけれど、親が言っているからとりあえず会う。別に付き合っている彼女がいて、その相手にも事情を話していない。亮の意思はどこにあるの?」

 早口で捲し立てると、亮が顔をしかめて静かに首を横に振る。

「汐里に俺の家のことも抱えている事情も、なにもわからないだろ!」

 売り言葉に買い言葉。まさにそんな流れだった。その証拠に、発言して亮はすぐに後悔した顔になる。
< 100 / 143 >

この作品をシェア

pagetop