クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
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 目を開けると、ガンガンと頭の中でなにかが鳴り響いている。寝ても痛みが取れない事態は久しぶりだ。というよりここ数日、眠りも浅く疲れが抜けない。

 もぞもぞとアラームを止めて、枕元に置いてあった封筒に手を伸ばす。ベッドから出ない格好で手探りで掴み、寝ぼけ眼で顔の前にかざした。

 真っ白の大きめの立派な封筒はまるで結婚式の招待状だ。『Hotel Großer König』とお洒落な字体で印刷されている。

 桑名さんの言っていたレストランのオープニングレセプションパーティーの招待状だ。

 あの電話から三日経ち、今日はパーティー当日の土曜日で招待状は昨日届いた。

 これを見るたびに彼女からの電話は夢ではなかったのだと思い知らされる。

『その日、私と亮さんの婚約発表も行う予定なんです。』

 あれはどういうことなの? 亮は今、私と付き合っているんだよね。

 胸の上に手を当て、深呼吸する。なにが現実でなにが過去のことなのか。落ち着いて状況を整理する。

 行って真実を確かめたい気持ちと、行けば五年前と同じ思いをするかもしれないという恐怖がせめぎ合う。

 再び亮と付き合いだして、彼の本気さは十分伝わっている。むしろ以前よりもさらに大事にされていて、愛されていると実感する。
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