クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
 あのときは突然すぎて、亮に流されるままだったけれど、よくよく考えればとんでもないことをしたような。

「汐里」

 今さら動揺して、思考が暴走しそうな私を亮の落ち着いた声が現実に引き戻した。彼は私の頬に手を伸ばし、しっかりと目を合わせる。

「今日のプレオープニングのイベントが無事に終われば言おうと思っていた。今後も仕事で十分な成果と結果を出していくから、もう誰にもなにも言わせない」

 亮の深い漆黒の瞳はまったく揺れずに私を捕える。私も瞬きひとつせずに彼と向き合った。

「桑名社長の言った通り、汐里に出会って俺は変われたんだ。汐里がいたからここまでやってこられた。絶対に幸せにするし大事にする。だから一生、そばにいてほしい」

 温かいものが溢れて胸を詰まらせる。おかげですぐに声にならない。

「ありがとう。私でよければ、ずっと亮のそばにいさせてください」

 穏やかに亮が笑い、どちらからともなく唇を重ねる。幸せで苦しいなんて贅沢だ。

 キスの後、強く抱きしめられたかと思えば、突然亮は私を素早く抱き上げた。

「わっ」

 横抱きされ反射的に亮の首に腕を回せば、至近距離で目が合った。なにか言おうとする私の前に亮が口を開く。

「体調は?」

 思わぬ質問に私は目を(しばたた)かせる。

「……平気」

 素直に小声で答え、私は腕の力をよりいっそう強めてさらに亮にくっついた。
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