クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
「うん。亮は昔からカッコよかったけど、もっと素敵になった」

 それはきっと大学を卒業して別れている間に彼が(つちか)ってきたものも大きいんだと思う。努力して、頑張ってきたんだ。私が想像するよりもずっと。

 正直に答えた私に対し、亮はなぜか面食らった顔になる。そして視線をさ迷わせ、大きく息を吐いた。

「本当に汐里には敵わないな」

「え……」

 意外な亮の返答に驚くと、彼は私の頭を撫でた。

「汐里も綺麗になったよ」

 慈しむ触れ方と声に対し、その表情は切なく歪んでいる。

「離れてそばにいられなかったのが、悔しいくらいに」

 そう言って亮は私の額に軽くキスを落とした。涙腺が緩みそうになるのを必死に堪えて私は答える。

「でも……その分、これからはずっとそばにいてくれるんでしょ?」

 亮の大きな手が頬に滑らされ、目尻に唇が寄せられる。そして至近距離で彼は穏やかに笑った。

「もちろん、約束する」

 言い終わるのと同時に甘い口づけが始まる。まるで誓いだ。私も彼の温もりを感じながらぎこちなく応える。

 その間に、彼の前にさらに素肌をさらす形になり、空気に触れた箇所が寒いと感じる間もなく亮の体温が直に伝わる。

 心地よい反面、どうしても久しぶりの事態に緊張してしまう。それも見越してか、身を固くしている私に、亮は優しく触れ続け徐々に私の頭も体も(とろ)かされていく。

 呼吸の仕方も忘れそう。唇を舐めとられ息を乱している私に、亮もまた余裕のない面持ちで告げてくる。

「汐里は余計なことは考えず、おとなしく俺に溺れていたらいいんだ」

 亮には全部お見通しなんだ。胸の奥が苦しくて、切ない。けれどそれは彼が好きで愛しくて堪らないからだ。

 返事は声にならない。ただ精一杯の気持ちを込めて、私から彼に口づけた。
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