クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
 汐里と別れて、大学院の博士課程を修了した俺は、経営学と共に水族館事業について学ぶため日本を離れた。

 会社を継ぐためと言えば聞こえはいいが、自分自身の未熟さをどうにかしたかったからだ。

 汐里と出会って過ごした時間を無駄にしたくない。彼女に気づかされて教えられたことは山ほどある。

 いつか汐里が俺の手がけた水族館を訪れて笑顔になってくれたらいい。そのときに彼女の隣に別の男がいたとしても。汐里が幸せならかまわない。

 時間が経てば、とにかく仕事をこなしていれば、汐里を忘れられると信じていたが、それは叶わなかった。

 なにかにつけて汐里ならどんな反応をするだろうかと考えてしまう自分がいる。雑念を必死で振り払い、会社の後継者として勉強と経験を積むのに打ち込んで実力だけはつけて帰国した。

 未練がましくも彼女への想いを引きずり、とはいえ連絡を取る資格もない。

 自分は彼女の人生からとっくに退場している。汐里もおそらく俺には二度と会いたくないだろう。

 そんな折、付き合いのあったホテル『グローサーケーニッヒ』のレストランの改装事業に携わる話が持ちかけられた。

 あくまでもレストランをメインに、海の中をコンセプトにしてアクアリウムを楽しんでもらう。会社の名前を背負って初めて統括責任者として任せてもらう案件となった。
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