クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
 押し通す形で汐里を(とど)めさせたものの俺はどうすべきなのかはっきりさせられずにいた。

 別れたときのことを掘り返して懺悔(ざんげ)したいのか。余計な話はせずただ彼女を家まで送っていけばいいのか。

 答えが出せず用事を済ませ部屋に帰ると、汐里はソファで眠っていた。あまりの緊張感のなさに脱力する。

 しかしすぐに思い直す。体調と薬の影響もあるのかもしれない。彼女は昔から偏頭痛持ちで薬をいつも持ち歩いていた。

 そっと汐里の額に手を当てる。熱はないし、よく眠っている。それほど疲れているのだろう。

 上着を脱いでネクタイをほどき、しばらく考えを巡らせる。そして俺は彼女を抱き上げ、ベッドに運んだ。

 化粧をしっかりしているからか、格好のせいか記憶の中の汐里よりもぐっと大人っぽくなって綺麗になった。一方で、無防備な寝顔は相変わらずだ。

 彼女にベッドを譲り、俺はソファで休もうと踵を返そうとした。そのとき、汐里がかすかに目を開け上半身を起こしたので、驚きで目を見張る。

 さらに続いて彼女のとった行動に俺は度肝を抜かれた。

 なにを思ったのか、寝ぼけているのか。彼女はドレスのファスナーに手をかけ、たどたどしくも下ろしだす。

「おい、汐里。脱ぐな」

「だって皺になっちゃう」

 極力冷静に指摘すれば彼女は子どもみたいに返してきた。その間にもドレスの肩紐がずり落ち、肌の露出が増して白いインナー一枚になる。
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