クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
 結果的に最後にはならず、今もこうして汐里がそばにいる現実に感謝する。

 眠っている彼女の左手をとれば、薬指にはあのときになかった未来を約束するものがあって、幸せを感じずにはいられない。

「んっ」

 触りすぎたからか、汐里が小さく身動(みじろ)ぎし目を開いた。

 至近距離で目が合い、先に声をかけようとすると彼女が柔らかく微笑む。見惚れていると、珍しく汐里から唇を重ねてきた。

「好き」

 妙な色っぽさを含んだ告白に目を見張ると、汐里は再び俺に体を密着させ瞳を閉じた。

 わざとなのか、寝惚けているのか。おそらく後者なのだろうが、理性を揺さぶるのには十分すぎ。

 結局いつだって俺は汐里には敵わない。

 仕返しとばかりに彼女の首筋に顔を埋め、髪で隠れるギリギリのところに赤い跡を残す。これはすぐに消えるが、大事なのは目に見える形だけじゃない。

 一度失ったからこそ、もう二度と手放さない強い決意がある。

 あと少しこのままの状態でいたい反面、そろそろ起きてもらわないと歯止めが効かなくなりそうだ。

 なによりさっきの台詞は、できれば起きているときにもう一度しっかりと伝えてもらいたい。

 言ってくれるだろうか。

 俺自身、昔は言えなかった自分の気持ちを今はわりと素直に口にできるようになった。

「俺も好きだよ」

 耳元で穏やかに告げ、続けて名前を呼ぶ。この先すれ違うことがあっても、そのたびにたくさん話してふたりで進んでいけばいい。

 絶対に幸せにしてみせる。汐里が俺をこんなにも幸せだと思わせてくれるように。今度こそ目が覚めそうな汐里に、俺は誓いの意味も込めて優しく口づけた。

Fin.
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