クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
 結局、亮のマンションで料理を振る舞う話に落ち着いた約束の木曜日。

 私のアパートだとどうしても狭く感じるし、料理を準備する間、亮には好きに過ごしていてほしい。

 迎えに行くという申し出を丁重にお断りし、私は仕事が終わって一度帰宅してから彼の元へと(おもむ)いていた。

 私とは反対に亮は大学のときと住まいを変えていて、ここに来るのは初めてだ。

 亮から送られてきた住所を元に、地図アプリを確認しつつ私は目的地にたどり着いていた。スマホの画面と目の前の建物とを何度も交互に見比べた結果、ここで間違いない。

 あっているはずなのに、だからこそ余計に私は怖気(おじけ)づいていた。

 先に調べて、ある程度知っていたにも関わらず、いざ高級タワーマンションを前にすると、その敷居の高さに緊張してしまう。

 デザイン性があり生活感がまったく感じられない外観にまず驚き、マンションの周りはレンガ風の壁に囲われ、中が詳しく見えないようになっている。

 唯一の入り口と思わしきところに、私は緊張しつつも近づいた。

 白のレースブラウスにベージュのスカートと控えめな格好に、下準備してきた料理の材料を詰め込んだ大きめの保冷バッグを抱えてという状態なのはどうしても心もとない。

 一歩足を踏み込めば、先週訪れたグローサーケーニヒのロビーさながらの豪華さで外から受ける印象とはまた違う。

 天井も高く暖色系のライトに照らされ、歩くたびに床が音を立てそうだった。
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