クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
「どうぞ」

「お邪魔します」

 改めて小さく告げて、広い玄関で靴を脱ぐ。リビングまで続く廊下は明るすぎず、床には(ほこり)ひとつ落ちていない。

 別の部屋へのドアが目に入り、いったい何LDKなのかと想像を巡らせる。

 リビングは想像より広くて、まるでモデルルームみたいだった。あまり生活感がないというか。カーテンがないのにも驚いた。

 色味はおとなしく、全体的にモノトーンでまとめられている。大きな黒い革張りのコーナーソファに、ガラステーブル、敷いてある絨緞は白で、小さな棚にはぎっしりと本が並べられている。

 私が来る直前まで読んでいたのか、読みかけの本と書類がソファの端に無造作に置かれている。 さらに視線を奥に向け、私は息を呑んだ。

「あっ!」

 亮に許可も取らず足早に近づく、リビングの奥には大きな水槽が設置され、その中では水草の合間を色とりどりの熱帯魚が泳いでいた。

「すごい! たくさんの魚が泳いでる」

 まるで水族館みたい。個人宅で十分すぎるほど立派なアクアリウムだ。

 水槽に顔を近づけ、じっと見つめる私の前を見覚えのある魚が横切る。黄色っぽい小さな胴体に対し、大きめの青白いひれが特徴だ。

「バタフライ・レインボー!」

 思わず声をあげる。
< 43 / 143 >

この作品をシェア

pagetop