クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
「ゴールデンハニー・ドワーフグラミーも!」

「相変わらず詳しいな」

 ふと近くで声がして、ようやく私は水槽から視線を移した。呆れているのか、感心しているのか、声色だけでは察せない。

 すぐ隣には亮がいて、私の荷物をダイニングテーブルの上に置いて戻って来たらしい。そこで私はここに来た本来の目的を思い出す。

「ごめん。急いでご飯作るね」

「慌てなくていい。キッチンはそっち」

 亮に案内される形で後に続く。対面式のキッチンは予想通りというか、なんというか、あまり使われている形跡がない。

 冷蔵庫を開ければ寂しくなるほどがらんとしていて、目眩(めまい)を起こしそうだった。

「亮、あまり家で食べないの?」

 彼が料理をできないわけではないのを知っているので、この聞き方でいいのかな。

 付き合っているとき、私も料理は好きな方なのでどちらかといえば振る舞う方だったけれど、亮もそれなりに上手だった。

 むしろこだわりと器用さで言えば私よりも上だった気が……。

 亮は淡々と包丁やまな板など必要なものを収納スペースから出していく。

「料理はあまりしない。一人分をわざわざ作るのは面倒なんだ」

 その気持ちは痛いほどわかる。私も社会人になってから出来合いのものを購入したり、外食も増えた。彼なら付き合いもあるだろうから外で食べる機会も多いだろうし。

 最低限のキッチン用品の場所を教えてもらい、私は持ってきたエプロンを身に着け、髪をうしろで軽く束ねる。
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