クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
 どうしたの?と尋ねる前に彼の形のいい唇が動いた。

「ここで汐里の料理姿でも堪能しようかと」

「いいから作業して!」

 反射的に返せば、亮は喉をくっくと喉を鳴らして持ってきたノートパソコンを開いた。

 絶対にからかわれている。いつもそう。どこまで本気なのか掴めない。私ばかりが翻弄されている。

 気を張っていたものの、やっぱり冗談だったのか亮の視線はすぐにパソコン画面に向けられた。

 こういうとき対面キッチンっていいのかも。自分のアパートはよくある壁付けの小さなキッチンでこんなふうに料理をしていると相手の気配を近くで感じたりはできない。

 それにしても亮はこの状況で集中できるのかな?

 私の心配は杞憂で、亮の意識はすでに仕事に集中していた。パソコン画面を見つめる横顔があまりにも真剣で、私は急いで目を逸ら、自分の作業に戻る。

 大変なんだろうな、お仕事。

 そうは言っても具体的な仕事内容も彼の抱えている重責などもまったく想像つかない。

 炊飯器が音を立て、ご飯が炊けたのとほぼ同時におかずも完成した。

 メインの和風ハンバーグはきのこのあんかけソース仕立てで、それに合わせて豚ひき肉の割合を少しだけ多めにしている。アクセントは生姜で、我ながら上手くできた。

 副菜は、ほうれん草の胡麻和えとトマトのマリネを添えて(いろどり)も考慮する。あとはなすとオクラの煮びたしに、豆腐とワカメのお味噌汁と定番メニューにしてみた。
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