クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
 正直、さっきの亮の発言じゃないけれど、私も自分ひとりのためにここまで手の込んだメニューはなかなかしない。

 誰かのためっていうのは大きい。一緒に食べる相手がいるのも。

 ダイニングテーブルに運ぶ際には素直に亮に手伝ってもらう。少し遅めの夕飯が完成し、私たちは向かい合わせに座った。

「うまい。相変わらず汐里は料理が上手いな」

 一口食べて、すかさずお褒めの言葉をいただき胸を撫で下ろす。

「よかった。このハンバーグ作ったの、すごく久しぶりだから」

 そのやりとりを皮切りに、あとの会話はあまり意識する必要もなかった。

 『この料理も好きだった』とか『よく作ったよね』といった思い出話をはじめ、私の仕事について亮が話を振ってきたので、その質問に答えたり。

「変わらないな、汐里は」

 ミネラルウォーターの入ったグラスに口を付けた亮がしみじみと呟いた。その言葉をどう受け取っていいのか、微妙に迷ってしまう。

「ちょっとは大人っぽくなったと思わない?」 

「そうだな、綺麗になった」

 わざとおどけてみせた私に、さらりと歯の浮く台詞が返ってきた。これは、もっと反応に困ってしまう。その証拠に私は勢いよく彼から視線をはずしてしまった。

 そもそも、亮ってこんなこと言う人だったっけ? 可愛いとか綺麗とか好きとか。そういうのはほとんど口に出さないタイプじゃなかった? 少なくとも付き合っているときは――。
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