クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
 野菜不足だという香織のために、メニューは作り置きのラタトゥイユをアレンジしてパスタソースにし、かぼちゃサラダとキャロットラペを付け合わせにする。

 エアコンを効かせた部屋で長年愛用しているミルクホワイトのローテーブルに二人分の食事をセットし、昼食は始まった。

「汐里は、本当に料理上手だよね。そりゃ彼も外で食べるよりこっちをねだるわ」

 サラダから手を付け、続いてパスタを口に運んだ香織が彼女らしい賛辞を放った。

「そんな手を込んだものは作ってないよ」

「わかってないなー。あるものでぱぱっと手際よく作れるのがいいんだって」

 フォークにパスタを巻き付け、香織がニヤニヤと告げる。お返しに私は香織の近況について突っついてみる。この前、合コンで知り合って意気投合したという彼とはどうなったのか。

 その話でひとしきり盛り上がり、食後に香織がお土産に買ってきたシュークリームとアイスコーヒーを出すと、彼女の本領が発揮された。

 聞き役に徹していたのから一転し、取り調べのごとくあれこれ尋ねてくる。

 香織には色々心配もかけたし、大学時代の話もちらっとはした。なので下手に隠し立てもせずに答えていく。

「彼も、よく遊びに来るの?」

「全然。来てたのは大学生のときね。今は彼の家に行かせてもらってるよ」

 エアコンが弱めだからかグラスはすぐに汗をかいていく。指先で拭い、なにか拭くものを持ってこようと腰を浮かした。

「まぁ、泊まるならそっちの方がいいかもね。相手も忙しいんでしょ?」

 なにげない切り返しに私は一瞬、目を泳がせてしまった。それを香織は目敏(めざと)く気づく。
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