クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
 香織に家で話を聞いてもらい、思い切って私は自分から亮に電話をした。私から電話をするのは珍しく、亮はやや驚き気味だった。

 『都合でも悪くなったのか?』と次の会う約束についてまずは尋ねられ、やんわりと否定した私は、とりあえず夕飯のメニューについて切り出してみる。

 律儀に答える彼と表面的な会話のやりとりが続き、ややあって私は意を決した。

『あの、ね。それで次に行ったとき、よかったら……泊まってもいい?』

 緊張で声やイントネーションがおかしかったかもしれない。スマホを持つ手が震えて、じんわりと頬が熱を持つ。

『……汐里がかまわないなら、俺は喜んでと返事するだけだよ』

『う、うん。よろしくお願いします』

 ぎこちなく返すと電話の向こうで亮が小さく笑ったのがわかった。そして電話を切った後、私はとてつもない徒労感と居た堪れなさに襲われたのだ。

 一連のやりとりを思いだして私は身悶(みもだ)える。

 いくらなんでもストレートすぎた!? 亮、笑ってたし、あからさますぎたのかも。もうちょっと気の利いた可愛らしい言い方とか……。

 とはいえあったのなら、それを使っているし、他にどう言えばいいのか浮かばなかった。

 とにかく、どういう経緯であれこうして現に泊まることになったんだから(おん)()だ。むしろここまできたら後戻りできないし、するつもりもない。
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