クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
 大学生のときの話だ。亮と付き合いだして、三ヶ月経つか経たないかの頃、お互いの家に行き来するのもそこそこ当たり前になっていた。

 その日は外で夕飯を食べてから亮のマンションに足を運び、私のハマっているアメリカの連続ドラマシリーズのDVDをふたりで観ていた。

 ソファに並んで座り、ちょうどディスク一枚分の話が終わったところで、亮が時計を確認する。

 私も追って見れば、時刻は午後九時半を過ぎていた。いつもならこのへんで亮から『送っていく』と申し出されるのを、この日は私が先手を打った。

『よかったら、泊まってもいい?』

 さりげなく尋ねると、亮は珍しく大きく目を見開いて私を二度見した。私としては、そこまで驚かれたのがむしろ意外で、早口に補足する。

『このシリーズ、ここまできたらもう一気に全部観たくて。でもそうすると遅くなりそうだし……』

 私の説明に対し、亮の顔はどんどん渋くなる。たしかに何度か彼のマンションに遊びに来てはいても泊まったことはない。

 とはいえDVDを見終わったら、このソファでそのまま休ませてもらう程度でかまわない。

 しかし、それはあくまでも私の勝手な希望であって、やっぱり突然すぎる話だったのかも。付き合っているとはいえ失礼だったかな?

『えっと……いきなりごめんね。困らせるつもりはなくて……難しいなら、続きは改めてにするよ』

 彼の反応からあれこれ思い巡らせ、フォローする。すると隣に座っていた亮が大きくため息をついた。

『付き合っている彼女から泊まってもいいかって提案されたら、男としては色々考えるし期待もするんだけど?』

 あまり感情を乗せずに返ってきた言葉に、私の頭は即座に真っ白になった。ややあって脳が動き出したかと思えば、激しく狼狽(うろた)えるしかできない。

『え、いや。その……』
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