クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
 さすがに経験はなくても、私だって人並みの男女間のお付き合いの知識くらいはある。周りからの情報もあるし、亮の言いたいことが理解できないほど子どもでもなかった。

 でも、あまりにも不意を突かれどう返せばいいのかわからない。

 キスをして、くっついてスキンシップにもようやく慣れてきた。そこから先に進むのもゆくゆくは、といった感じで、今の自分にまったくそのつもりはなかった。

 その反面、全然意識しないのも妙な話で、この場合考えが及ばなかった自分が悪いというか、情けないというか。

 言葉を迷っていると、私の暴走を止めるかのごとく亮の手が頭に置かれた。

『困らせたのは俺の方だったな。ほら続きのDVD。一気に観たいんだろ?』

 次のDVDを渡すよう手を差し出してくる亮に、私は小さく頷く。

『……うん』

 このまま何事もなかったかのように亮の優しさに甘えてやり過ごすべきなのかな。今すぐどうこうする勇気もないし。

 そう思う一方で、私の中のなにかが揺れる。

 ほぼ無意識に、差し出された亮の手にDVDではなく自分の手を重ねた。

『あのね、一気に観たいのも本当だけど、それは亮ともっと一緒にいたい気持ちもあるからで……』

 勢いで発したおかげで、続きはしどろもどろになる。つまり、なにが言いたいの。答えになっていないと自分でも呆れる。すると次の瞬間、亮から素早く唇を重ねられた。

『今日は汐里の希望を優先させる』

 驚いて呆然としている私に、彼は意地悪く笑った。

『でも、次は譲らない。絶対に逃がさないから』

 至近距離で宣言され、目だけで答えるのが精いっぱいだった。再びゆっくりと顔が近づけられ、次はおとなしく彼からの口づけを受け入れた。
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