クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
 そんな初めてのお泊まりに関するやりとりが鮮明に蘇り、私の顔色は赤から青くなった。対する亮はおかしそうに目を細めている。

「まさか、まんま同じ台詞で切り出されるとは思ってもみなかった」

『よかったら……泊まってもいい?』

 先日、電話越しに私から投げかけた発言を思い出す。当然、意識したわけでもない。単純なのか、進歩がないのか。

「変わらないな、汐里は」

 もう否定する気も起きない。居た堪れなさで視線をわずかに落とすと、胸がチクチクと痛みだした。

 ついでに頭の痛みも主張してくる。それらを振り払い、私は自分から亮をまっすぐに見据えた。

「そんなことない」

 強く言いきれば、彼の漆黒の瞳がわずかに丸くなる。

「同じ言い方でも、あのときとは違うよ。今日は、その……」

 ちゃんと全部わかったうえで、泊まると口にした。そう言いたいのに恥ずかしさもあって、上手く言葉が紡げない。

 口ごもっていると、不意に視界が暗くなる。亮がさらに私との距離を縮めたと気づいたのと同時に唇に温もりを感じた。

 (ついば)むようなキスが幾度となく繰り返され、私も目を閉じて素直に受け入れる。

 最初は唇を重ねるだけで、そこから時折甘噛みされたり、軽く音を立てて吸われたりして、亮のペースでキスは進められる。

 その間も私に気を配っているのが伝わってきて、胸が締めつけられる。
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