クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
 静かすぎる部屋で、お互いの息遣いとアクアリウムのエアーポンプの音がやけにはっきりと響いていた。

 唇に神経が集中し、熱がこもっていく。頬に添えられた手にそっと顔を預ければ、亮か口づけを中断させた。

 大きく息を吸ってじっと亮を見つめると、彼は空いている方の手も私の反対側の頬に添えた。まるで幼い子どもに対する扱いみたいで、つい不服を表し眉根を寄せる。

 でも、この手を振り払おうとは思わない。亮はふっと穏やかに笑った。

「好きだよ」

 完全に油断していた私の耳に不意打ちが放たれる。優しい笑顔に、心臓を鷲掴みにされた。

「……うん。私も」

 掠れた声で小さく答えると、そのまま亮の腕の中にすっぽりと収まった。彼の胸に顔を(うず)めて、ホッと息を吐く。

 続けてちらりと上目遣いで亮を見れば、はっきりと視線が交わる。目は口程に物を言うというのは本当なのかもしれない。

 ごく自然な流れで私は亮の首に腕を回した。すると、応えるように彼から口づけられ、そのまま抱き上げられる。

 ふわっと体が宙に浮いて私は亮にしがみついた。お互いに言葉はなにも発しない。亮がゆっくりと歩き出し、体温も心拍数も上昇していく。

 連れてこられたのはおそらく寝室で、足を踏み入れれば暖色系のライトが自動でぱっと点いた。詳しい部屋の内装がわからないのは私が亮にしがみついて身を縮めているからだ。
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