あやかしの集う和菓子屋にようこそ
「この人は目を覚ました時、全てを忘れているよ」

蒼樹さんはそう言い私に微笑んだ後、私をギュッと抱きしめます。久しぶりの体温に、私の胸は高鳴り続けました。

「ただいま、栞」

「蒼樹さん、おかえりなさい」

沙月さんと葉月さんは、優しく微笑んでいました。



蒼樹さんが帰って来てから二週間後、沙月さんと葉月さんが帰らなければならない日がやって来ました。

「手伝ってくれてありがとう。いつでも遊びに来てくれ」

電車のホームで蒼樹さんがお土産を手渡し、微笑みます。私もペコリと頭を下げました。

「また会いに来てください。いつまでも待っています」

沙月さんと葉月さんと握手をし、微笑み合いました。涙を流さなかったのはきっと、また会えると思っているからです。

「また来年の夏に来ます」

「和菓子、おいしかったです」

沙月さんと葉月さんはそう言い、電車に乗って行きました。ゆっくりと電車は動き出し、京都から離れて行きます。
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