太陽と月
自分が言おうとした事が途端に恥ずかしく惨めになった。
そんな自分が情けなくて、下を向く。
そんな私に
「下見んな。椿。上向け!」
そう言って背中をポンポンと陽介に叩かれる。
顔を上げて陽介の方を見ると
「椿!下見るな!上向け!下向いてても何も良い事なんてない。」そう言って太陽みたいな笑顔を見せてくれた。
「陽介は…どんな時でも笑顔だね」
そう呟く私に
「幸せだから笑うんじゃなくて、笑っていれば幸せがくる!人生楽しんだ者勝ち!」そう言ってピースサインをする。
初めて会った時もそんな事言ってたっけ。
でも、皆が皆そうじゃない。
私は施設でいつも笑っていた。でも、幸せなんて一つも来なかった…。
ネガティブな感情がグルグルと頭の中を一杯にする。
それでも、陽介の笑顔を見ると信じたくなる。
私も、こっちの…太陽の世界に踏み込む事が出来るんじゃないかって。
自分でも自分が嫌になる。
こんな醜い自分を受け止めてくれる颯介の傍に居たいと思う一方で
私を正しい道に導いてくれる、陽介の背中を追い掛けていきたいとも思う。
私は…どっちの世界の人間になる事が幸せなんだろうか。
そんな事をボンヤリと考えた。
「椿?どうした?」陽介が心配そうな顔で私を見る。
「あっううん。何でもないよ!」そう誤魔化す私に
「椿はたまに、そうやって考え込むな。何でも俺に相談しろよ?」
そう言って頭を撫でてくれる。
だから、そういう事は外では辞めて欲しい。
「あっ!ねぇ!陽介ってバスケ部だよね?どうして日本武道部じゃないの?」
疑問に思っていた事を口にする。
すると少し困った様な顔をして
「あぁーまぁ昔はあったんだけど廃部になっちゃってさ。俺はその時、日本武道部とバスケ部掛け持ちしてたんだけど、今はバスケ部1本!本当なら俺は受験生だけど、うちは中高一貫校だからクラブに集中出来るから有り難い。」
そう教えてくれた。
「どうして廃部になったの?」
そう聞くも何故か誤魔化された。
私も特に気にする事なく、他の会話を楽しみながら校門をくぐった。