副社長の歪んだ求愛 〜契約婚約者の役、返上させてください〜
「ああ。みいちゃんって言ってたな」

須藤さんが、思い出したように呟いた。

「えっ?」

おもわず、私と啓太さんの驚きが重なった。

「美鈴も、幼少期はみいちゃんって呼ばれていたよね?」

「は、はい」

「えっ?本当?確か……4、5歳ぐらいの女の子が、ロビーに置かれた電子ピアノを弾いていたの。その子が私のところに来て、お姉さんも何か弾いてって言ってきたの」

「もしかして、きらきら星変奏曲?」

「そうそう。って、えっ?あなたがあの時のみいちゃん?」

「そうです!私、あの時お姉さんが弾いてくれた曲にすごく感動して、自分も頑張ろうって思ったんですよ」

「そうだったの。私は、あの時あなたに促されて、何ヶ月ぶりかにピアノを弾いたの。やっぱりピアノを弾きたいって思えたのよ。私が今ピアノを続けられてるのは、みいちゃんのおかげでもあるのよ」

初めて知る事実に、なんだか心が温かくなった。

「なんかすごい偶然だね、華」

「ええ。美鈴さん、あの時私に声をかけてくれて、本当にありがとう。
東山さん、今夜は美鈴さんを連れてきてくださって、ありがとうございます」

「いえ、私はそんな改まってお礼を言われるようなことは、何もしてませんよ」

啓太さんが、恐縮して答えた。

「私には大きなことだったんですよ。東山さん、美鈴さん、よかったらまた聴きに来てくださいね」

「はい。もちろんです」

思わず、力強く答えていた。



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