副社長の歪んだ求愛 〜契約婚約者の役、返上させてください〜
「美鈴ちゃん、ドキドキしてる?」

「うん」

「大丈夫よ。たくさん練習したもんね。いつも通りでいいんだよ」

田川先生にそう言われて、幼いながらに少しだけホッとしていた。



『1番 佐山美鈴さん ドイツ民謡 ちょうちょう』



会場に流れるアナウンスとともに、たくさんの拍手に迎えられてステージに出た。
教えてもらった場所で、手をお腹の前にそろえてお辞儀をする。
椅子の背をくるっとまわって座り、田川先生と目を合わせた。

先生のパートが始まり、それに合わせて私も弾き始める。

大きなミスなく弾き終えて、客先にお辞儀をすると、最初よりも大きな拍手が鳴り響いた。


舞台袖に戻ると、田川先生は「頑張ったね」と私の頭を一撫でして、次の子のフォローに向かった。

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