副社長の歪んだ求愛 〜契約婚約者の役、返上させてください〜
「やっぱり、上京する気はない」

答えは分かっているけど、幾度となく、この質問をしてしまう。

「ないわよ。美鈴もお母さんの心配ばかりしてないで、自分の幸せでも見つけなさいよ。彼氏はいないの?」

「いるわけないでしょ。私には譲れない条件があるの。仕事を続けさせてくれること。それから、この土地で暮らせること。お母さんがここを離れる気がないなら、私がこっちに帰ってくる。こっちで再就職して、お見合いでもするかな」

母は、困ったような顔をする。

「もう、そんなこと言ってたら、いつまでたっても幸せになれないわよ。母さんのことはいいから、自分のことを考えなさい」

「はいはい」

ここのところ、帰省するとこんな話ばかり繰り返している気がする。
仕事もしたいし、結婚もできたらしたい。
ここまでならともかく、そこに〝実家で暮らしたい〟という要素が加わると、叶う確率はぐっと低くなる。

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