婚約解消してきちゃいました?ヘタレ令嬢様のチートキャンプ!
「朝早いね。夜明け前から起きてたの?」
辺りは薄暗いが、何となくうっすらと明るくなってきている。
そろそろ夜明けだ。
豹牙は「俺朝早いし。うひひひ…」と、また意味もなく笑っている。ホントよく笑うねこの人。
「っていうか、朝から火起こし?」
「うしし。美味いもん作ってやるから待ちなさい」
こんな早朝に食べれるかな。
「羅沙ちゃん。グレイトビューは夕陽だけじゃないのですよ?」
「え?」
「ほらほら」
ぽめを抱き上げながら、椅子から立ち上がった豹牙の指差した方向とは、昨日の夕陽とは逆方向。そっちは山際だ。
しかし、山際は少し明るくなっていて、赤みのある光が漏れている。
空は赤みを帯びた薄い紫色へと変わっていった。
それは徐々に、周りの空間さえ同じ色に染める。
「わあぁぁ…綺麗」
「俺的には夜明け、朝陽の方が好き。『世界の夜明けだぜよ!』みたいな?」
この光が差し込み始める僅かの時間だけ、時の流れがゆっくりになっているような気がする。
何とも不思議な時間だ。
朝陽を見たことないワケじゃない。
でも、今ここで見る朝陽は、今まで見たことないものと思えた。
それは、きっと。
私の心のせい。