婚約解消してきちゃいました?ヘタレ令嬢様のチートキャンプ!

暖かみのある綺麗な色に僅かに染まった温もりに包まれるよう。

思わず手を広げて、おもいっきり空気を胸に吸い込んだ。

気持ちいい…。



そして、染められた空を仰ぐ。



雲一つない空をじっと見上げて、ただ静寂の中に。

私の胸の鼓動だけが、うるさく強く響く。



胸が高鳴って、今。

ドキドキしてるんだ、私。



時間が経つと共に太陽はご来光を背負って徐々に顔を見せる。

暖かみを持った紫色の空は、だんだん爽やかな青に染められていく。

まるで、幕を開けるように。



ねえ…今なんじゃない?

私の、新しい幕開けも。



これからの未来、掲げる理想、意志、決意、高揚感。早い胸の鼓動。

それらを胸に抱えて、私は空の幕開けを見送っていた。



「ほい、どうぞ」



夜明けの太陽に釘付けになっていると、横から取っ手のついた金属のカップが登場した。

中からはホカホカと湯気が立っている。

「…これ、何?」

受け取って中を覗くと、ほかほかの黒い液体だ。

ホント、何これ。薬湯?

でも、フワッと香ばしい良い香りがする。
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