婚約解消してきちゃいました?ヘタレ令嬢様のチートキャンプ!

いつも飄々とフザけている豹牙のこんな仕草や様子は滅多に見られない。

だから、何か予想外の事態が起きたのでは、とハラハラする。



「…羅沙」

「は、はいっ!」

「左回りだ…」

「え?時計回りが?」

「違う。時計回りは右回り。…でも、おまえは左回りなんだよ、きっと」

「へ…」



そして、豹牙は私の左の手を取る。



「で、右手じゃなく、左手。俺の予想が正しかったらな」

「は、はい」



豹牙の予想?それは何だろ…と、思いながらも、言われた通りに右ではなく今度は左の掌を上にして翳す。

そして、左回り、左回り…。



全身の『気』の流れを感じ取れるよう、目を閉じて集中。

先程とは逆回転の左回り。まるで、心臓から放出したものを敢えて戻すといった感じだ。

回れ。左に回れ。足の先から、頭のてっぺんまで。



回って、戻ってこい。

この掌に。



そう念じ続けると、背中の方へ何かが押し寄せてくる感覚を覚えた。

まるで、波が迫ってくるかのように。



手が、熱く…。
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