目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
《福富》へ着き、俺達はこじんまりとした座敷に通された。
座敷と言っても、仕切りがあるだけで、襖も扉もない。
単なる畳の席だ。
5つ並んだ座敷の一番奥に座り、メニューを見たり、壁にかかったおすすめを見たりする百合を……俺は見つめている。
……ストーカーじゃない!
と、断言する自信はもうない。
こうして再会して、声を聞き、時間を共にしてしまえば、深みに嵌まってしまうことは心の何処かでわかっていたんだから。

「一色さん?決まりました?」

「ん、ん?あ、ああ。えーっとね、この福富御膳にしようかなって……」

福富御膳、何も考えてなかった俺は、咄嗟にそれを指差してしまった。
まぁ、御膳というのだから、鍋とかがでてくることはないだろう。
問題はない。
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