目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
「……そうか。どちらの方だ?」

「大学時代の恩師の娘さんで、八神百合さん」

「………………」

父は名前を聞くなり黙り込んだ。

「おやじ?」

「……明後日は暇か?」

「ん?明後日?」

明後日は日曜日だ。
三国さんに確かめてはいないが、特に仕事の用もなかったと思う。
昼から百合と会ってこれからのことを話し合う予定があるだけだ。

「うん、百合と会う予定がある以外は……」

「そうか。では一緒にこちらに来なさい」

「え……百合と?」

「そう言ったが?」

父は淡々と言った。
もともと、感情の起伏が乏しく何を考えているかわからない人ではあったが、まさかこう返してくるとは想像もしなかった。
会社第一の父は、一色製薬にプラスになる女、それ以外に関心はないと思っていた。
ましてや、一緒に来いなんてまず言わないだろうと。

「わかったよ、じゃあ日曜日の午前中に」

「……待っている」

そう短く言うと、父はすぐに電話を切った。
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