目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
「本当に手土産はいいの?」

助手席の百合が不安そうな顔で尋ねる。

「いいんだよ。そういうの好きじゃない人だから……」

「でも……」

俺がそう言っても、百合はまだ納得していないようだった。

日曜日、俺達は父の住む家へと向かっている。
挨拶に手土産を考えようとした百合に俺は必要ないといい、それでちょっとした言い合いになった。
そんなことで、と思われそうだが、生真面目な百合からしたら非常識なんだと思う。
だが俺にもあの父に手土産なんて持って行きたくないという思いがあった。
棺に横たわる母の顔。
それを一人で見送った寂しい気持ち。それがまだ忘れられないのだ。
納得行かず口ごもった百合に、笑って誤魔化しつつ、俺は車を走らせた。
< 186 / 285 >

この作品をシェア

pagetop