婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
「嫌か?」

「え?」

「険しい顔になっているから」

 そんな顔になっていたんだ。気をつけなくちゃ……。

「いえ、その」

 咄嗟に言い訳が思い浮かばなくて言い淀む。

「最近、そういうのが多いな」

「そういうの、とは?」

「言いたいことを遠慮なく言う正直さが、茉莉子のいいところだと思っているんだけど」

 それはつまり、最近の私は本音を言わずにいるという意味よね。

 あえてそうしているつもりはなかったし、指摘されて初めてそうなのかと気づかされた。

「急に遠慮してどうしたんだ?」

「そんなつもりはないのですが……」

 これ以上このままではよくない。体調を言い訳にして逃げていないで、きちんと話をしないと。

「あの、実は」

 勇気を振り絞って話をしようと、ベッド横に座る新さんを見上げた。しかし新さんはすぐに視線を外してジャケットの胸ポケットから携帯電話を取り出した。

「悪い。電話だ」

 なんてタイミングが悪いの。

「今病院にいるから話せない。え? いや、俺じゃなくて妻がちょっと」

 仕事の電話だろうか。それにしては口調がぶっきらぼうな気がする。

「どうして知っているんだ? まさか――」

 目を大きく見開いて、なにかを確認するかのように私の顔を見つめた。
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