婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
 水中から上がったかのようにすーっと長く息を吸って胸を膨らまし、乱れた呼吸をなんとか整えようとするが、荒れ狂う心臓が邪魔をする。

 心音が新さんにまで聞こえてしまいそう。

「急にどうしたんですか」

「別に急じゃない。ずっと前から好きだった」

「ずっと前って……」

 いつから? 結婚してから柔和になったから、その頃からだろうか。

「さっきも美麗に、俺は茉莉子が好きだと言っていたのを聞いていなかったのか?」

「あれって私に向けてだったんですか!?」

「茉莉子じゃなければ誰だって言うんだ」

「白石さんかと」

 呆然とするわたしを見つめながら、新さんは盛大な溜め息を漏らした。

「そんなわけないだろ。好きで、どうしてでも手に入れたいから無理やり政略結婚したのに」

 にわかに信じられなくて、新さんの顔から目が離せない。

「俺は好きだけど、茉莉子は俺を好きではないだろう」

「え! なにを言っているんですか!?」

 思わず飛び上がりそうになり、起こしかけた上半身を慌ててベッドに横たえた。
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