婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
 お世話になった看護師さんたちに挨拶を済ませて、駐車場に止めてある車へ乗り込みマンションへと向かう。

「寄りたいところはあるか?」

「えっと……レモン系の炭酸水が飲みたいので、コンビニかスーパーに……」

「それなら家の冷蔵庫に腐るほどある」

「そうなんですか?」

「自分のものを買う時に茉莉子の顔が浮かんで、つい買っちゃうんだよ」

 隣にいない時でも私を思い浮かべていたなんて。

 入院している私に悪いと感じて、自分だけのものを買うことに気が引けるのだろうとか、以前の私だったら違う方向に考えていただろうけれど今は違う。

 新さんの想いを真っ直ぐに受け止められる。

「それならいいです。早く家に帰りたいです」

「遠慮せずに寝ていいから」

「では、お言葉に甘えて」

「ん」と短く返事をした横顔をちらりと見てから、幸福感に包まれたままゆっくりと目を閉じた。
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