婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました

 
 退院後は二、三日に一度点滴に通った。それも妊娠十週に入った頃にはなくなり、つわりのピークを抜けてからは食後に戻すくらいで、徐々に元の生活を取り戻していった。

 乗り物酔いのような気持ち悪さはずっと続いたが、六か月を迎えた辺りで霧が晴れたかのように不快感は消え去った。

 そこからは本当にあっという間だった。

 日を追うごとに変化していく身体つきに合わせてマタニティ用の下着や服を購入したり、生まれてくる赤ちゃんの服や用品を、数ある商品の中から厳選しなければいけなかったり。

 ふたりで過ごせる時間もあと僅かなので、無理のない程度にいろいろな場所へ出かけたりもした。

 懸念していた白石さんの件については、新さんの機転によって状況が一変した。

 これまで無愛想で冷酷な顔ばかり見せていた新さんが、余所行き顔しかしなくなったのだ。

 美麗と呼び捨てにしていたのを丁寧な口調で美麗さんと呼ぶようになり、話し方はすべて敬語に統一。冷たく突き放すような態度は、見ていて感心するほど紳士的で好青年に成り代わった。

 途端に白石さんの顔には嫌悪感が浮かぶようになり、何度か抗議していたが相手にされていなかった。
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