婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
「面倒ではないですか?」

「全然。むしろ俺が選んだものを茉莉子が身に着けているっていうのがいい」

 昨日も同じようなことを言っていたよね。やっぱりどういうつもりの発言なのか分からない。

「えーっと……」

 言葉を詰まらせながら整った横顔を凝視するが、新さんは涼しい顔をして前を向いたまま。

 私が困っているのは分かっているはずなのに、いつもあえて無視するんだから。まあ、私もこういう時はさらっと流したりするけれど。

「では、お言葉に甘えてよろしくお願いします」

 ぺこりと頭を下げると新さんは「ああ」と短く答えただけだった。

 到着したのは海沿いの街だった。電車で行ける場所なので私もたまに遊びに来たりしているから馴染みがある。

 大型ショッピングセンター近くのコインパーキングに車を停めて、施設内にある目的の映画館に入ると平日だからか館内はひと気がなく静かだった。

 昨晩のうちに見る映画を決めて事前にインターネット予約を済ませていたので、チケットをすぐに発券して飲み物とポップコーンを購入する。

 新さんはジンジャーエールと塩味のポップコーンで、私はオレンジジュースとキャラメル味。

 紳士な見た目でポップコーンを持つ姿はなんだかかわいらしく、微笑ましい気持ちになる。
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