婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
 先を行く背中についていくと、カップルシートという二人掛けの席に案内された。間仕切りがなくベンチシートになっていて、クッションがひとつずつついている。

 新さんは以前に誰かと座ったりしたのかな。もちろん私は利用するのが初めてなので、ドキドキとワクワクで胸が弾んでいる。

 これから上映されるのは海外のロマンティック・ミュージカル映画で、公開される前からかなり注目を集めていた話題のもの。

 私が見たいと言ったら、新さんも興味があるからそれでいいと。

 それにしても……。

 席に座ってからずっと触れ合っている太ももが気になって仕方がない。

 映画が始まっても意識がそこに持っていかれて、なかなか集中ができなかった。

 ひとりでいる時や女友達と見る時は気にせず映画にのめり込めるのに。

 そんな中、主人公ふたりの情熱的なベッドシーンが流れてもっと心が落ち着きを失くす。

 クッションの位置をずらそうと背中に手を伸ばしたら、隣の新さんに肘があたった。

「ごめんなさい」

 スクリーンに顔を向けたままの横顔に小声で話しかける。すると、おもむろに伸びてきた腕に手を掴まれて新さんの膝の上に誘導された。

 濃厚なラブシーンはまだ続いている。

 声にならない悲鳴を心の中で叫んだ。

 どうしよう。
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