婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
「どうした?」

 無遠慮に上から下まで眺めていた私の視線に気づいたのか、歩みを止めた無表情な顔に見下ろされた。

「なんでもないです」

 カッコいいなぁと見惚れていたなんて口が裂けても言えない。

 笑って誤魔化した私を見て、新さんはわずかに眉間に皺を寄せる。

「なんでもないならいいけど」

 ぶっきらぼうに言い放つと、私の手をしっかりと握ってまた歩きはじめた。

 人前でも手を繋いだりできる人なんだ……。

 トクトクと小さく胸で刻む音がくすぐったい。

 辿り着いたのは海を一望できる高台にあるフランス料理店だった。

「すごい! 一面海ですね!」

 だからわざわざ遠出をして海沿いの街まで来たのね。センスのよさに改めて感心する。

「テラス席を予約してあるけど、外でも平気か?」

「もちろんです。海を眺めながらご飯を食べるのは初めてです」

 今日は風も穏やかで陽射しも温かい。空気が澄んでいて遠くの景色まで綺麗に見渡せた。
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