婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
 マンションの近くまで戻ってきて、今後、私がひとりでも歩いて行ける距離にあるスーパーに立ち寄った。

「いっぱい買う予定なのでカートを使いましょう」

 カゴを乗せると、お願いしたわけでもないのに新さんが当たり前のようにカートを押す。

 こういう新婚さんみたいなふたりの姿に昔から憧れていたのよね。いざやってみると恥ずかしいものだな。

 浮き立つ心で歩みを進めながら、買う必要のあるものをカゴにどんどん入れていく。店内を半分回ったところですでにカゴの中はいっぱいになった。

「あれもこれも食べてもらいたいと思ったら、こんな量になっていました。ちょっと戻しますね」

 まだ買いたい食材もあるし。

「戻さなくていい。カゴをもうひとつ持ってくる」

「え? あ、ありがとうございます」

 買い過ぎだと制止を受けるかと思いきや、戻ってきた彼の手にあるカゴの中にはバジルの入ったソーセージがあった。

「それ、好きなんですか?」

「ああ」

「覚えておきますね」

 なぜだろう。新さんの行動ひとつひとつがかわいらしく思えてくる。

 生姜焼きの他にカレーとすき焼きが好きだと、レストランからこっちに戻ってくる道中で聞いた。

 こうしてソーセージを選んで持ってきたり、新さんも普通の男の人なのよね。
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