雨のリフレイン
ーーホテルに泊まる?

柊子の顔がサッとこわばった。

「し…翔太先生が泊まるつもりだったんじゃないですか?ここからなら、電車で10分もあれば帰れますから、私達は大丈夫です」

ホテルに泊まるなんて、考えてもいない。
帰ろうと立ち上がりかけた柊子の腕を、信子が掴む。



「ホテルストリークのスィートに!?
泊まりたいわ〜。
ねぇ、柊子、泊まりましょうよ。泊まる支度なんて、大丈夫。なんとかなるわよ。
あ、でも、二部屋用意出来る?
私、新婚夫婦の邪魔したくないわ」
「もちろん。隣同士で用意します」

翔太は、信子にウインクでもしそうな勢い。



柊子は、テーブルの下でぎゅっとこぶしを握る。

これ以上、我慢出来ない。元気よく振る舞うのも笑顔を作るのも、限界。
早く、一人になりたかった。
母のワガママが恨めしい。



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