雨のリフレイン
「けんかというか…
アイツ、別の女とデキてたの」
「げ、二股かよ。最低じゃん」
「しかも、一回寝たくらいでカノジョづらするなよって。アイツからアプローチしてきたのよ?ひどくない?まぁ、初デートでいきなりヤっちゃったのはまずかったかなって思うけど」


『一回寝たくらいでカノジョづらするな』


柊子は、愛美の言葉にドキッとする。

抱かれれば、洸平との間も何か変わると思ったのに、そう簡単には何も変わらない。
いや、柊子自身は変わったかもしれない。
三浦と寄り添っている姿を見て、例えようもないほどの焦燥感に苛まれるのは、彼に抱かれる幸せを知ってしまったから。


柊子は愛美にかける言葉が見つからない。


「愛美らしくないじゃん。もう少し相手を見定めたほうがよかったな」
「だってさ、研修医だったの。早く手をつけておかないとって焦っちゃった。
あーヤラレ損よ!」

愛美は飲み干したビールジョッキをドンとテーブルに叩きつけた。

脳裏によぎる不安を振り切って、柊子は愛美にやっと声をかける。

「大丈夫だって。愛美は綺麗だし優しいし、きっとすぐ新しい人見つかるよ」
「八坂の言う通り。そんな焦らなくてもいいと思う」

柊子と圭太が慰めるが、愛美はテーブルに突っ伏してしまった。


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