雨のリフレイン
『まだ、好きと言ってくれるのか…
俺の妻は柊子だ。俺の家族は、柊子と信子さんだけだよ。
すまない柊子。頼むから、一生のお願いだから、少しだけ耐えてくれないか。
あの女のことは弁護士と、キッチリカタをつけるから。だから…俺を…』

……俺を見捨てないで。

洸平の祈るような声が柊子の耳に響く。
信じられないほど、弱々しく、切に願うような彼の言葉が柊子の心を震わせる。


柊子の返事は聞かず電話は切れた。


声を聞いたら、会いたくてたまらない。どんな気持ちで『見捨てないで』と言ったのだろう。

最後に会ったあの日、洸平は婚姻関係に期限をつけてもとか、今すぐ籍を抜いてもいいとか、慰謝料すら用意すると吐き捨てるように言って去っていった。
柊子を好きだと言ってくれなくて、彼の気持ちがわからなくて不安だったのだと、弁解することもできず、ここまでこじらせてしまった。

もっと早く会いに行ってキチンと話し合えばよかった。心をしっかりと繋いでいれば、鈴枝に付け入られる隙を見せずに済んだかもしれない。


だから今、絶対に別れないと言った洸平の言葉を信じたい。


柊子は、そっとお腹に手を当てた。
大丈夫。あなたがいるから、私は強くなる。雨の中で泣いたりしない。前を向いて頑張るからね。



< 253 / 302 >

この作品をシェア

pagetop