雨のリフレイン



「翔太、俺もう行く」

その時、ちらっと腕時計を見て水上が言った。

「あー、助かった。
いいところに来てくれてありがとうな、洸平」

水上は最後に桜木をのぞきこみ、安定した様子を確認してから歩きだした。



「水上先生が、今日はどうしていらしたんですか」

水上の姿を目で追いながら柊子が尋ねた。

「あれ、柊子ちゃん知らなかった?ほら、今、山形先生がスキーで怪我して休んでるだろ?
だから、今日から週に2日、バイトで来てもらうことになったんだ」

答えてくれたのは翔太だ。

「そうなんですか?教えてくれたらいいのに。
病院で、水上先生に会えて嬉しい!
相変わらず白衣がカッコいいですね、水上先生」


喜ぶ柊子を尻目に水上は何も言わない。


「洸平、なんで柊子ちゃんにそんな冷たいのさ。柊子ちゃん、可愛いからモテモテだぞー。桜木のオヤジもお気に入りだし。うかうかしてると、横からかっさらわれるぞ?」


ニヤニヤしながら翔太は言う。だが、水上は興味なさそうにちらりとさえ柊子を見ることも無く、部屋を出て行った。
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