雨のリフレイン
桜木の病室を出ると、それまで我慢していた涙がにじんできた。

長生きするつもりはないと、ともすれば死に急いでいるように見えた桜木が、生きると、言った。

そして、柊子に、ありがとう、と。


嬉しい。


ふと、柊子は窓の外に目をやる。
外はもう真っ暗で、月が見えた。

雨じゃない。これ以上は、泣いちゃダメだ。

柊子は、指で涙を拭い、涙を堪えるためにぎゅっと目をつむる。


すると、近くで足音が聞こえてきて、慌てて顔を伏せた。


ーー早く、行って。


だが願いに反し、足音は柊子に近づいて、そして止まった。


「…え?」


いきなり腕を掴まれてとっさに顔を上げると、そこには水上がいた。


「水上先生?」


水上は、何も言わず柊子の腕を掴んだまま、歩き出す。


「先生、どうしたんですか?」
「…桜木組長と、二人きりで何を話してたんだ。
泣くほどのことか」


思いもかけない水上の登場に柊子は動揺する。だが、すぐに我に返った。
水上が柊子の心配なんてするはずもない。たまたま通りかかっただけ…


「水上先生、もしかして、心配してくれたんですか?
…そんなわけないか。
先生、手を離して下さい。私、もう、帰るから。
泣いてなんかいませんよ。嬉しかっただけ」


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