彼は高嶺のヤンキー様6(元ヤン)



「ドリンクです。」

「え?頼んでませんが?」

「サービスなんだよ、すがちゃん。」



困り顔でよっちゃんは言った。



「ここ、ゲームメンバーには無料でドリンクを出してくれるの。」

「そうでしたか。」

「飲もう、すがちゃん!緊張して、喉がカラカラだよ!」

「うん・・・。」



作り笑いをする相手に、うなずいて同意する。

ストローで一気に吸い上げる様子を見ながら、私も同じように口付ける。

冷たくて、わずかな苦みのあるオレンジジュースは、のどをうるおしてくれた。





(・・・あれ?)





一息ついたところで再び気づく。

よっちゃん・・・この場所のこと、『初めて行くところだから心細くて・・・』って言ったよね?



(ならどうして、『ここが初めて』なのに、『ゲームメンバーには無料でドリンクを出してくれる』ってわかってるの?まるで、来たことあるような口ぶりじゃない?)



「よっちゃん!」

「なに?」



感じた疑問を、相手にぶつけようとした時だった。





「こんにちは~」





そこへ、陽気な声が響く。

やってきたのは、黒のワイシャツを着た男。



「突然で悪いけど、ロッコモモさんってどっち!?」

「え?わ、私ですが?」

「話は聞いてるよ~借りてるポイント、今日で全部、返してくれるんだってね?」

「「え!?」」



予想外の言葉に、私とよっちゃんの声がそろう。



「一緒に来てるそっちの子はなに?一緒に返してくれるんだよね?」

「えっ!?よっちゃん!?」



どういうこと!?と思いながらよっちゃんを見れば、困惑した顔で首を横に振るばかり。



「し、知らない!知らない!わからない!」



パニックを起こしていて、話にならない。



「ど、どういうことですか?」



だから、代わりに相手に聞く。

すると男は、くっくっと笑うと私達に言った。





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