彼は高嶺のヤンキー様6(元ヤン)



「怖いよぉ~!」



私の後ろに続くよっちゃんの鳴き声が周囲に響き渡る。



「怖いよぉ!助けてお母さん!」

「黙れ!」

「やめてください!暴力はやめて!」



よっちゃんへと手を振り上げたので、立ち止まって抗議。



「ちっ!静かにしろよ!?」



吐き捨てるように言うと、コブシを下ろしてくれた。



「落ち着いて、よっちゃん!大丈夫・・・」

「う、うん・・・!」



大丈夫だよ。



(私が戦えることを誰も知らない。)



不意討ちは効くはず。

攻撃のタイミングをうかがいながらついていく。

ほどなくして、立ち止まる男たち。





「入れ!」



そう言って、個室の1つに押し込まれる。



「え!?」

「な、なにここぉ~!?」



その部屋にはマットが敷かれ、シーツが乱雑に置かれていた。





「よーし、処女チェックはじめるかー!?」

「「!?」」





その言葉で顔を見合わせる私達。

それでこいつらが、なにをしようとしているかわかった。






(最悪だ!)





動きを止めれば、クソ男が顔をのぞき込んでくる。



「なに地蔵になってんだ?お前らみたいなのは、これしか借金の返し方がねぇだろうが!?」



(お前らってひとくくりにすんなよ!!!)



「てか、未成年にこんなマネしたら―――――」

「きゃああ!?何するのよ!?離してぇー!!」

「よっちゃん!?」



再び上がる悲鳴。

見れば、よっちゃんが外から連れ出されていた。



「よっちゃん!?」



慌てて追いかけようとしたが――――――



「どこ行く!?」



敵に行く手をはばまれた。



「よっちゃんになにをしてるんですか!?」

「お前には関係ねぇだろう!?」

「あります!関係あります!友達だから!親友だから!!」

「友達~?」

「そうです!」



聞き返す敵に向かって断言した。

私に、菅原凛に友達はいなかった。

いたのは、うわべだけの、浅い友情関係。





(凛道蓮の時みたいに、心から友達だと思える子はいない。)





菅原凛として、いじめがはじまってからは特に――――





(友達はいないものと考えて生きていこう。)





凛道蓮に友達がいるから、いらない。

だから菅原凛が1人でもいいじゃない





(そう思っていたのに―――――――)





―すがちゃん―





友達がいることの嬉しさ。

友達の大切さ。

友達のありがたさ。




失いたくないと、自覚してしまった。







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