彼は高嶺のヤンキー様6(元ヤン)






「本当につらくなったら・・・・・・助けて下さい・・・・・!」





(今はまだ、言えないよ・・・・・。)





いじめられているという状況が恥ずかしい。



やり返せなくて、情けないと思っている。



まだ頑張れると思うから――――――――――





「『まだ』、大丈夫ですから・・・・」

「・・・・・・・・・あんま、『頑張るな』よ・・・・・・・・・・」





抱き寄せられ、耳元で優しくささやかれる。

もどかしい気もした。

めんどくないな、私・・・・と思った。

でも、言葉にできない以上、言葉になるまで待つしかない。







(弱音を吐くのも勇気がいるなんて・・・・・・・・)







抱きしめてくれる瑞希お兄ちゃんの背中に両手を回す。

力を込めて抱き着けば、同じだけの力で抱きしめられる。







「・・・まぁーだ、みけんにしわできてんぞ?」

ちゅ。

「え?」







優しい顔が近づいたと思ったら、みけんに口づけられた。

子供にするような、優しい、優しいキス。

ゆるい力で押し付けられた唇。





「あ・・・・」





嬉しいというよりも、頭が真っ白になった。





「おい!?」

「うっ・・・・・・!」





同時に、両眼から涙があふれてきた。





「凛・・・・嫌だったか?」

「ううん!ううん!ううう・・・・!」





何度も首を横に振って違うと伝える。

それで瑞希お兄ちゃんの綺麗な手が、私の頭をなでてくれる。


なぜ、泣けてくるのかわからない。

だけど、すごく安心したら、急に泣けてしまった。

怖かった出来事が過去になり、今がある。

レイプ未遂が、走馬灯のように頭に流れて―――――――――






「凛。」






瑞希お兄ちゃんで、上書きされて、消えていった。







「み、瑞希お兄ちゃん・・・・・!」

「泣け、凛。今の凛には―――――――それが正解だ。」

「うぅうっ!うっ・・・・!」







瑞希お兄ちゃんの胸に顔をうずめる。

そんな私の顔に、瑞希お兄ちゃんは何度もキスを落としてくれた。

海外ドラマで、外国人達がするみたいに、額に、頬に、眉間に、目元に。

キスを与えてくれつつ、頭をなで続けてくれた。

完全な三密だったけど、私の心の平穏は守られた。








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