先輩の彼女
そして、こんな時に限って、失恋しているって言うのに、相手の心を試してみたくなった。

「編集部に、大学生のバイトの子がいるんです。」

「ああ。たまに営業部に顔出す奴だろ?」

「そうです。その子に、倉庫で段ボールの下敷きになりそうな時、助けて貰ったんです。そのお礼に奢ってって言われて。」

“そうか”って、さらりと受け流されると思ったのに、封筒にPOPを入れる作業だけが、響き渡る。

「先輩、聞いてます?」

「ああ。聞いてるよ。」

仕事中だから、そんなに話せないのは知っているけれど、聞いてきたのは自分でしょって、心の中でツッコミ。


しばらくして、白石さんから貰った封筒は、間野さんの机の上からすっかり無くなった。

「えっ!早い!」

「斎藤と違って、俺、器用だからな。」

だから器用とか不器用とか、この仕事に関係ないって!

「白石さん。遠慮して少なく渡したんじゃないですか?」
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