同期のあいつ
俺はタクシー乗り場に向かおうとする彼女の腕を後ろからつかみ、
「キャッ」
声を上げそうになった口に手を当てた。

「バカ、大声出すな。俺だ」
こんなところで悲鳴を上げられたんじゃ大騒ぎになる。

「ど、どうして?」
「説明するから、行こう」

驚いた様子の彼女を乗せ、俺は自宅へと向かった。


「で、どういうことなの?」
部屋に入り、ソファーに腰を下ろしたところで鈴木が聞いてきた。

さあ、どこから話そうか。
まずは、
「今日は悪かった。一日中不機嫌で、お前にも八つ当たりしてしまった。申し訳ない」
頭を下げる。それが筋だろうと思った。

「自覚はあるのね?」
「ああ。普段小熊の態度を叱っているくせに、今日の俺は子供みたいだった」
「ちゃんとわかっているじゃない」
「・・・すまない」
「で、その理由は?」
あくまでも強気に攻めてくる。

俺は顔を上げると、正面から鈴木を見据えた。

「な、何よ」

「お前、三和物産の件で何をした?」

「はあ?な、何を今さら」
ちょっとだけ声が大きくなったのは動揺した証拠だろうな。
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