同期のあいつ
退社後、1人で飲みに出た。

時々来るホテルのバー。
OLが1人で来るには少し敷居が高いけれど、知り合いに会わないのが良くてここにした。

その日、気分の荒れていた私はいつもよりたくさんお酒を飲んだ。
元々弱いわけではないけれど、昨日はなぜかダメだった。

何度もグラスを空け、マスターにも心配され始めた。
ヤバイ、かなり酔ってる。
冷静に自分でも分析していた。まだこの時までは。

だんだんとまぶたが重くなり、強烈な睡魔が襲ってくる。

「大丈夫ですか?」
マスターの心配そうな声が遠くの方で聞こえ、私の記憶がプツンと途絶えた。



次に聞こえてきたのは、

「ほら、鈴木。帰るぞ」
低音で、心地いい声。

こんな醜態を誰よりも見せたくない相手。

「だから平気だって」
強がって手を払ったつもりがよろけてしまい、結局彼に支えられた。

その後は・・・
2人で店を出て、事前にとっていたスイートルームへ向かった。

もちろん、1人で泊るつもりで取った部屋。
父への反抗から、思いっきり贅沢をした。

心配した高田は部屋まで着いてきてくれた。

「ここいくらだよ?」
呆れたように言われ、
「自分で稼いだお金で泊るのよ。かまわないで」
強気で言い返した。

酔っていたとは言え、
「暑いー」と言って自分で服を脱いだ記憶も
「私はいらないの?」なんて弱音を言った記憶も、
何年かぶりに人前で泣いた記憶も、
すべて残っている。

あー、もー、最悪。
人生最悪の汚点だわ。
< 4 / 248 >

この作品をシェア

pagetop