同期のあいつ
「いらっしゃいませ」
ドアの前に立った瞬間に扉が開き、上品そうな女性が目の前に現れた。

「おはようございます。無理を言ってすみません」
「いえ、一華さんの頼みですから」
フフフと笑われた。

「すみません」
深々と頭を下げて、店の中へと入る。

ここは銀座の一等地にある高級ブティック。
子供の頃から母さんに連れられて通った店。
本当はまだ開店時間ではないけれど、オーナーに無理を言って開けてもらった。

「一華さん、コーヒーと紅茶はどちらがよろしいですか?」
「えっと・・・コーヒーを」

いつもは紅茶派なんだけれど、今はコーヒーの気分。



「どうぞ、ミルクとお砂糖も入れておきました」

来客用のおしゃれなカップではなく、大きめのマグカップになみなみとつがれたカフェオレ。

「ありがとうございます」

昨日のお酒が残った体に染み渡っていく。

この店のオーナーは50代の女性。
母さんとも仲が良くて、小さい頃から私もかわいがってもらった。

出してもらったコーヒーを口に運びながら、オーナーが服を並べるのを見る。
相変わらず趣味がいい。
それに好みをよくわかってくれているから、びっくりするような服を選ばれても意外なくらい似合っていたりする。
新しい自分を見つけてくれるのもオーナーの特技。
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